大阪高等裁判所 平成4年(ネ)1988号 判決 1992年12月15日
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取り消す。
本件を原審に差し戻す。
ただし、請求の趣旨を、「原判決の別紙目録記載の各財産(以下「本件各財産」という。)は昭和五〇年三月二六日死亡した谷脇渡(以下「渡」という。)の遺産分割前の遺産であることを確認する。」と訂正する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文と同旨
第二 当事者の主張
(被控訴人らの本案前の主張)
本件各財産がもと渡の遺産であったことを被控訴人らは争っていないから、本件訴訟は訴えの利益を欠き却下すべきである。
(本案の主張)
一 請求原因
1 渡及び訴外亡谷脇生亀(以下「生亀」という。)の相続関係は、原判決の請求原因1記載のとおりであるから、これを引用する。
2 本件各財産はもと渡の財産であり、遺産分割は成立していないが、これらが現に渡の遺産分割前の遺産であるか否かについて控訴人と被控訴人らの間に争いがあり、共同相続人間において本件各財産についての遺産分割協議をすることができない。
3 よって、控訴人は本件各財産が渡の遺産分割前の遺産であることの確認を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1は認め、同2のうち、本件各財産がもと渡の遺産であったことは認めるが、遺産分割協議が成立しており現在では名義人の財産である。
第三 証拠(省略)
理由
一 控訴人は、渡の遺産である本件各財産について遺産分割が未了であると主張し、現在もなお共同相続人全員による遺産共有の状態にあることの確認を求めて、本件訴訟に及んでいるものであって、原審における請求の趣旨も子細に検討すれば右の趣旨のものであり、当審においてこれを明らかにしたものと解される。
二 前項の訴えは、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である(最高裁平成元年三月二八日第三小法廷判決民集四三巻三号一六七頁参照)。
三 渡と生亀の死亡及び両名の相続関係については当事者間に争いがないところ、弁論の全趣旨によれば、現在控訴人主張のとおり遺産分割が未了であるとしたときの渡の相続人は、被控訴人両名と生亀の相続人である控訴人と選定者の両名及び谷脇弘一ほか二名であると認められる(別紙親族関係図参照)。しかるに、記録によれば、控訴人は、原審において、控訴人及び選定者以外の右共同相続人全員を相手方として出訴しながら右被告らのうち谷脇弘一ほか二名に対する訴えを取下げているので、本件訴訟は共同相続人全員が当事者として関与しているものでなくなっていることが明らかである。よって、本件訴えはその余の点について判断するまでもなく、不適法として却下すべきである。
四 そうすると、本件訴えを却下した原判決は結論において相当である。よって、本件控訴を棄却することとし、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(別紙)
親族関係図
<省略>
選定者目録
京都市伏見区向島庚申町五四番地の三七 谷脇兎美子
同所同番地 谷脇裕治